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Betelgeuse's Diary

間違えてライラックに卵を産んでしまう雪虫たち。本州ではトドマツ以外にもいるのだろうか?

雪虫。白いロウの綿毛がついた羽虫です。

雪虫の正体であるタマワタムシ科のアブラムシには、リンゴやナシの害虫を含めて何種類もいて、それぞれ決まった時期に植物の間を移動します。
井上靖の小説『しろばんば』のタイトルにもなった虫。この小説の舞台となった地方ではその姿を白婆と呼んだようですね。

そのワタムシのうち、雪が降る前の季節に移動するので有名なのが
トドノネオオワタムシ、学名 Prociphilus oriens。
トドノネ オオ ワタムシ。
トドの根 大 綿虫。

ウェザーニュースの調査では、この虫を見てから初雪までの期間は意外と長いそうです。
北海道エリアの利用者と取り組む『雪虫大作戦』スタート!/2009.10.16[archive]
「雪虫大作戦」結果発表。大量発生から初雪まで22日、俗説より1週間以上遅め/2012.01.12[archive]

↓これはまちがい(笑)



トドマツの木の根を主なすみかとしてるワタムシです。
生態を解明した農学博士の河野広道がシナリオを書いた、科学映画『雪虫』が1941年に発表されました。
以下は河野広道の著書。

森の昆虫記〈1〉雪虫篇 (1976年) (北海道ライブラリー〈4〉)

生態について

http://www.fri.hro.or.jp/kanko/fukyu/jumoku/konchu/data/kamemusi/abura/todonone/kaisetu.htm[archive]

宿主:モクセイ科(ヤチダモ,アオダモ,ハシドイ),トドマツ.
モクセイ科樹木の幹の隙間で卵で越冬.翌春,新芽を吸汁加害する.
夏にはトドマツに移動し,根に寄生して数世代を繰り返す.
晩秋,雪虫になってモクセイ科樹木にもどってくる.



ヤチダモなどに到達した雪虫は、同じ仲間の綿毛のにおいで「安心して」卵を産むそうです。
http://insect3.agr.hokudai.ac.jp/~akimoto/lect-ent/lect5.html[archive]

答:ヤチダモは北大構内だとたくさんありますし、北海道だと湿地や川沿いにたくさん見られます。街中では、ユキムシは誤ってライラックに引きつけられ、子供を産んでしまうことがありますが、そこでは全く子孫は生育できません。そもそも、ヤチダモまで到達できるユキムシの数は極めて少ないはずです。無駄を見越して、多量にユキムシを作り出しているとしか思えません。ヤチダモ上でユキムシの幼虫がたくさん孵化しても、ヤチダモが枯れることはありません。ヤチダモの芽では密度調節機構が働き、一定数の幹母しか生き残れないからです。


答:トドノネオオワタムシの綿(ワックス)は、同種の個体を認識するのに使われています。ユキムシを1匹で容器に閉じこめてもなかなか子を産みませんが、複数の個体を容器に入れると、「安心して」子を産みます。同種個体がいるかどうかは、飽和炭化水素によって見分けているようです。



雪虫たちのなかには、ライラックを餌と間違えて卵を産むものもいます。この場合、卵からかえった幼虫は成長することができません。
http://www.hfri.pref.hokkaido.jp/zukan/konchu/00data/kamemusi/abura/todonone/note.html[archive]

寄主  モクセイ科(ヤチダモ・アオダモ・シオジ・トネリコ・チョウセントネリコ・コバノトネリコ・ハシドイ)とトドマツ(文献1943)。ライラック・イボタ・レンギョウにも産卵するが、孵化幼虫は生長できず死滅する(文献1943)。



ライラックで病害虫になっていないことは、以下でも確認できます。
http://www.agri.hro.or.jp/center/kenkyuseika/seikajoho/h07s_joho/h0700058.htm[archive]

市の花がライラックである札幌市の市街地では、餌を間違えた雪虫たちが、ライラックの樹皮に産卵する姿が見られるそうです。
再び雪虫(トドノネオオワタムシ) - 札幌の自然日記 - Yahoo!ブログ[archive]


本州での雪虫について。

トドマツはなぜ本州にないのでしょうか? - Yahoo!知恵袋[archive]

現在の奥羽山脈では、トドマツの生える冷涼さを持つ高さに、土壌の発達したところはほとんどありません。



トドマツの分布とは別に、仙台ではそれなりに、関東太平洋側でもときどき、トドノネオオワタムシは発生しています。しかも秋田や青森ではあまり見かけないとか。

雪虫見た事ありますか? - Yahoo!知恵袋[archive]

現在仙台に住んでいて、今頃よく見かけます。
ですが、秋田に住んでいたころは見たことありませんでした!


私も現在仙台在住ですが、故郷の青森では極稀にしか見かけませんでした


神奈川県小田原市と東北より温暖な地域でありながらも偶然見つけ、サッと手に取り写真を撮って直ぐに放しました



トドマツ以外に、何か利用している木があるんでしょうか?

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コメント

ライラック台木の根に雪虫

はじめまして。
ライラックのひこばえを鉢で育てていて(たぶん台木のイボタでしょう)、鉢から抜いてみると根に雪虫のような昆虫がたくさんいましたのでブログの記事にしました。
http://flowerandfish.air-nifty.com/hanatosakananohibi/2014/06/post-6693.html
場所は北広島です。
これはトドノネオオワタムシとは違いますか?

Re: ライラック台木の根に雪虫

> ライラックのひこばえを鉢で育てていて(たぶん台木のイボタでしょう)、鉢から抜いてみると根に雪虫のような昆虫がたくさんいましたのでブログの記事にしました。
> 場所は北広島です。

はじめまして。
写真を拝見しましたが、よくわかりません。
ワタムシ類は北海道大学に研究者がおられるので、そちらにメールで質問されてはいかがでしょうか?
相談されるときは、虫にピントの合ったマクロの写真を撮ることと、有翅虫はそのうち飛んで行ってしまうでしょうから虫の死体を確保しておくのをお勧めします。
http://insect3.agr.hokudai.ac.jp/~akimoto/address.html

  • 2014/06/30(月) 01:11:18 |
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