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歯科医がフッ化ナトリウムとフッ化水素酸を間違えたことによる死亡事故。1982年4月20日、東京都八王子市

2012年9月27日に発生した、韓国・慶尚北道亀尾市の大規模なフッ酸ガス漏れ事故。
フッ酸ガス事故当時の映像を公開…過失が招いた惨事=韓国 | Joongang Ilbo | 中央日報

この件により、フッ酸(フッ化水素酸)の毒性を示す話として、1982年に八王子市で起きた、歯科医がフッ化ナトリウムとフッ化水素酸の取り違えたことによる死亡事故が注目されています。

当時の新聞記事を眺めてみました。

虫歯予防薬が足りない→
歯科医の妻があいまいに「フッ素」を注文→
業者が注文をよく確認せず歯科技工用の劇物を持ってくる→
受け取りに通常と違い印鑑が必要だったが妻は気づかず→
歯科医はビンから小ビンに移すときにラベルに気づかず→
塗るときに女児が変な味に気づくが歯科医は無視し母親に腕を押さえるよう依頼…、と、
単純ミスが重なって重大事故へと発展していく例となっています。

朝日と毎日が見れなかったので、とりあえず宮城県の河北新報と、讀賣新聞分です。文章の質は、河北新報のほうがうまいようです。讀賣新聞は薬品の取り違えの経緯まで報道されていましたが、河北新報は東北のニュース優先なのか、途中までで続報がなくなりました。

朝日と毎日新聞ソースのほうはWikipediaに記載されている【八王子市歯科医師フッ化水素酸誤塗布事故】ので参照してください。
歯科医の妻が試しに歯に塗ってみて違和感を覚えたあと処分に焼却炉を使った、歯科医が業者と取引暦が浅いのでビンの意匠が違ってもおかしくないと思った、というのが朝日・毎日からの追加情報のようです。


この時期はフランスのミッテラン大統領訪日やシナイ半島返還やフォークランド紛争開戦など、いろいろあったようです。
宮城県関係ニュースでいうと、ゴールデンウィークにスポーツランドSUGOで行われた「西部開拓博」が河北新報の全面広告で出ていました。あのころはNHK放送の『大草原の小さな家』が人気でしたね。

初報(A):
讀賣新聞 昭和57年(1982年)4月22日朝刊 23面


ムシ歯治療の幼女急死 「フッ素」中身が毒物だった?
医師が薬液塗布中「からい」と訴え、苦しみ
八王子

<顔写真>:死亡した小池樹里ちゃん
<写真>:幼女の死亡事故で竹中歯科に事情聴取にはいる八王子署員

【八王子】東京都八王子市内の歯科医院で、幼稚園児がムシ歯予防のフッ化ナトリウム液を塗られた途端に苦しみ出し、間もなく死亡する事故があったことが21日わかった。八王子署が東京慈恵医大に依頼して遺体の司法解剖をしたところ、死因は「急性薬物中毒死」と報告された。同署では毒物の鑑定を急いでいるが、フッ化ナトリウムはムシ歯予防用に広く使用されており、専門家は、通常の使用では同液の塗布で死に至ることはない、という。このため、同署は薬液を間違えた可能性もあるとして、業務上過失致死の疑いで医師から事情を聴いている。

司法解剖結果は「中毒死」
 死亡したのは、八王子市散田町四の二九の四、会社社長小池美章さん(四六)の長女樹里ちゃん(三つ)(高尾杉の子幼稚園年少組)で、事故のあったのは、同市めじろ台一の七の七、「竹中歯科めじろ台医院」=竹中昇院長(六九)=。
 八王子署の調べによると、樹里ちゃんは二十日午後三時三十分ごろ、母親の春美さん(三三)に連れられ、兄(七つ)と一緒にムシ歯の治療を受けに同医院を訪れた。樹里ちゃんが春美さんにだっこされた状態で治療用のイスに座るとすぐ、竹中院長は樹里ちゃんの歯にフッ化ナトリウムを塗り始めた。樹里ちゃんが「からい」とむずかると、竹中院長は春美さんに腕を押さえているよう指示、いやがる樹里ちゃんに液を塗り続けたところ、樹里ちゃんは床にもんどりうって落ち、苦しみ始めた、という。
 樹里ちゃんは唇が白くなり、血の混じった泡をふき始め、さらに、腹痛を訴え始めたため、竹中院長はあわてて一一九番。樹里ちゃんは救急車で東京医大八王子医療センターに運ばれたが、約二時間後に死亡した。
樹里ちゃんの同医院への通院は四度目。フッ化ナトリウムを塗ったのは初めてだった。竹中院長は市販の「フッ化ナトリウム液」の表示がある三百ミリリットル瓶の液を使用したという。同署はこの瓶を入手、溶液の鑑定を進めている。
 これまでフッ化ナトリウムによる事故例がないこと、専門家の話ではフッ化ナトリウム液は無味であるのに、樹里ちゃんは「からい」と言っており、口の中がただれていることなどから、同署は竹中院長が液を間違えた可能性もあるとみて事情を聴くとともに、樹里ちゃんが特異体質だったかどうかも調べることにしている。
 厚生省では今回の事故について「フッ化ナトリウムの塗布で死亡することは考えられない」との見解を示している。フッ化物の塗布については、厚生、文部両省が昭和二十四年に、都道府県の保健所に通知を出し奨励しており、四十一年からは厚生省が奨励通知を出している。
 厚生省の調べでは、保健所でフッ化物を塗布した乳幼児(一 - 六歳)は五十五年度だけで約五十三万人にも上っており、このほか、今回のケースのように、歯科医師が塗布している例も多い。フッ化物の塗布がムシ歯の予防に役立つというのは定説で、京都府の一部や、アメリカなどでは水道水にフッ化物を入れ、ドイツなどヨーロッパでは錠剤にして飲んでいるほど。しかし、消費者団体の一部は「染色体障害(遺伝異常)や催奇形性などがあり、人体に有害」と主張し、ムシ歯要望にフッ化物を塗らないよう求ている。

フッ素では死なぬ
日本歯科大学講師・新藤恵久医博の話「フッ化ナトリウムはムシ歯予防のために広く使われていたが、新しいフッ化物の予防剤が開発されたため、最近は使っている歯科医師は少ないはず。フッ化ナトリウムは簡単に言えばフッ素そのもの。無味でからくはない。それが原因で死ぬようなことはとうてい考えられない。他の薬物を間違って使った可能性については、町の歯科医が使っている薬の中に、急性中毒を起こすような物質はこれといって頭に浮かばない」

老医師、通夜の席で倒れ入院
竹中医師は二十一日、自宅で八王子署員から事情聴取を受けた後、小池さん方でとり行われた樹里ちゃんの通夜に行き、焼香したあと、遺族に向かって無言で深々と頭を下げていたが、約五分後、そのまま肩先から崩れるように倒れた。病院に運ばれたが、脳血栓の疑いもある。




フッ素を塗るときに異常な味がある、というところで止められなかったものでしょうか。




初報(B):
河北新報 昭和57年(1982年)4月22日朝刊 19面


虫歯治療で3歳児急死
口から煙、血も吐く
薬間違いか、濃度ミスか
医師「フッ化ナトリウム塗った」
東京

<写真1>突然の愛児の死にぼう然とする父親の小池美章さんと母親の春美さん(八王子市散田町の自宅で)
<写真2>死亡した樹里ちゃん

【立川】東京都八王子市内の歯科医院で二十日、虫歯の治療を受けた三歳の女の子が医師から薬物を歯に塗られた途端に苦しみ出し、近くの医院に転送されたが、約二時間半後に死亡した。歯科医は「虫歯予防のフッ化ナトリウムを塗った」と言っているが、司法解剖の結果、死因は急性毒物中毒と分かった。八王子署は別の薬物を間違えて使ったか、濃度、量を誤った医療ミスと見て二十一日、業務上過失致死の疑いで歯科医院を家宅捜索してカルテを押収、捜査を始めた。

フッ化ナトリウム
防腐剤、ホウロウの乳白材、虫歯予防材などの用途に幅広く使われているフッ素化合物。一般に刺激性と毒性が強く、大量に摂取するとおう吐、けいれん、呼吸困難などを起こし、最悪の場合は死亡することもあり得る。最小中毒量は体重一キログラムあたり四ミリグラムといわれている。

 死んだのは同死散田町四ノ二九ノ四、会社員小池美章さん(四六)の長女樹里ちゃん(三つ)。 樹里ちゃんは二十日午後三時四十分ごろ、母親の春美さん(三三)に連れられて自宅近くの同市めじろ台一ノ七ノ七、竹中歯科めじろ台医院に行き、院長の竹中昇医師(六九)から虫歯の治療を受けた。
春美さんの話では、この際、竹中医師が「虫歯の進行を止める治療をする」と言って二百cc入りポリ容器から液体の薬品を金属製トレイに移し、ガーゼに浸して樹里ちゃんの歯に塗った。樹里ちゃんが「辛い」と嫌がったため、竹中医師は春美さんに手足を押さえるように言い、再度たっぷりと塗り込んだ。その途端、樹里ちゃんはいすから転げ落ち強い腹痛を訴え、口から煙を出し血を吐いた。
竹中医師が強心剤を注射、救急車で近くの病院に運んだが、樹里ちゃんは同日午後六時五分、死亡した。
転送先の病院から通報を受けた八王子署は死因に不審な点があるとして同夜、竹中医師から事情聴取したが、竹中医師は「虫歯を予防するフッ化ナトリウム少量を容器からトレイに移し、ガーゼに塗る通常の方法で行った。こんなことになって驚いている」と説明、医療ミスでないことを強調した。
しかし関係者の話では、歯へのフッ化ナトリウム塗布では量を誤ると神経障害を起こすことがあるが、口から煙が出たり、血を吐くことはありえない、という。
同署は二十一日午後、慈恵医大で司法解剖したところ「急性毒物中毒死」との所見が得られたため、業務上過失致死容疑で同日夕、竹中医院を家宅捜索、カルテなど関係書類を押収した。今のところ竹中医師がフッ化ナトリウム以外の薬物を間違って使ったか、極端に濃度や量を誤った可能性が強いとみている。このため竹中医師が樹里ちゃんの歯に塗ったという薬物を警視庁科捜研に送って鑑定を急ぐ一方、詳しい解剖結果を待って竹中医師からさらに事情を聴く。
樹里ちゃんは今月二日から竹中歯科で奥歯三本の虫歯治療を始め、二十日は四回目。これまでにフッ化ナトリウムの塗布を受けたことはなかった。
自宅に引きこもっていた竹中医師は二十一日夜、次男(二八)を通じ「詳しい解剖結果が出てから話したい。開業以来、同じ治療をしているので薬品を間違えるというような初歩的なミスを犯すことはないと思う。医院内には他に劇毒物はない」と語った。
竹中医師は同日夜、小池さん宅で営まれた通夜に出席中、脳血栓で倒れ、入院した。

フッ化ナトリウム 米国で死亡例 厚生省 原因調査始める
東京都八王子市の歯科医院で起きた三歳の女児の死亡事故で、厚生省は二十一日夕から東京都衛生局を通じ事故原因の調査を始めた。同省は「歯科医が使用しているフッ化ナトリウムの水溶液で過去に事故があったとの報告はなく、別の劇薬を間違って使ったとしか考えられない」としている。
フッ化ナトリウムは透明で無臭の劇物。高濃度のものを飲むと、吐き気やめまい、呼吸困難などの急性症状を引き起こす。ただ、塗布しただけでは死亡することはないという。
歯の表面に塗ると、虫歯菌への抵抗力が高まるため、虫歯の予防用に厚生省と文部省が二十四年から二パーセントの水溶液の塗布を各県に指導。さらに厚生省は四十一年、全国の保健所に対し同水溶液の塗布を積極的に進めるよう督励、この結果、五十五年には全国で五十三万三千人の乳幼児が同水溶液の塗布を受けた。
これまで日本では、文献や学会でも同水溶液塗布によって事故が起きたとの報告はない。ただ米国で一九七四年、三歳の幼児が歯科医師のミスで高濃度の溶液塗布を受け、死亡したケースがFDA(米食品医薬局)へ報告されている。
また日本消費者連盟など消費者団体は「フッ化ナトリウムは発ガン性の疑いがある」と主張しており、二十一日森下厚相に厚生省が推進している乳幼児への塗布を直ちにやめるよう申し入れた。

量が多すぎたのでは
飯塚喜一神奈川歯科大教授(口腔衛生学)の話 虫歯予防のためフッ化ナトリウムを塗る治療は日本では十五、六年の歴史があるが、幼児が死亡したケースはこれまで聞いたことがない。歯の治療で使う劇毒物は数種類しかなく、しかも容器の形や表示にも特徴があることからフッ化ナトリウムと間違えて他の劇毒物を塗ることはちょっと考えられない。あり得るとすればフッ化ナトリウムの量を多めに使い過ぎたのではないか。三歳の幼児だと一 - 一・五cc前後のフッ化ナトリウムを直径三ミリ程度の綿球で歯に塗れば問題は起きない。



読売の記事と比較すると、どのような器具で塗ったかについて、母親と医師両方の記載があるのが大きいですね。
ただ、「二百cc入りポリ容器」については、すべての記事を見たかぎり「三百」が正しいようです。




続報:夕刊讀賣新聞 昭和57年(1982年)4月22日 15面

「毒物」鑑定を急ぐ
ムシ歯幼女急死 医師の意識はっきり
【八王子】東京都八王子市めじろ台の「竹中歯科めじろ台病院」=竹中昇院長(六九)=でムシ歯の予防薬を塗布中の同市散田町四の二九の四、会社社長小池美章さん(四六)の長女樹里ちゃん(三つ)が急死した事件で、二十一日夜までの八王子署の事情聴取に対し、竹中院長は、間違いなくフッ化ナトリウム液を塗布した、と言っており、今後の原因究明は東京慈恵医大での毒物調査、警視庁科学捜査研究所での薬品検査の鑑定結果が主点となってきた。
竹中院長は、樹里ちゃんの様子がおかしくなったのは薬の塗布二、三十秒後と言っており、「つけ始めたとたんに異常を訴えた」という母親の春美さん(三三)の証言と食い違いが見られ、同署は塗布の際の状況をさらに詳しく調べることにしている。
同署は、診療室内の薬品数点を押収しているが、竹中院長がガーゼを使って塗布したと証言しているフッ化ナトリウム液の三百ミリリットル容器には、底の方に少し液が残っているだけだった。同署はとりあえず、この液を容器ごと警視庁科学捜査研究所に送り、フッ化ナトリウムなのか、あるいはほかの薬剤が入っていたものか内容分析を急いでいる。
樹里ちゃんの通夜で倒れた竹中院長は、市内の病院に入院したが、脳血栓の疑いもあり、面会謝絶の状態。しかし、病院の話では、意識もはっきりしていて快方に向かっているという。ただ同署の事情聴取に応じられるような状態ではなく、とりあえず診療室内に置いてあった薬液のリストアップなど周辺捜査に全力をあげることにしている。






翌日の報道(A):
河北新報 昭和57(1982)年4月23日朝刊 19面


やはり毒物だった
虫歯治療の幼女急死事件
警察がほぼ断定

【立川】東京・八王子市で起きた虫歯治療の幼女急死事件で八王子署は二十二日、歯に塗るフッ化ナトリウムをフッ化物系の毒物と間違えた初歩的な診療ミスとほぼ断定、毒物の鑑定を急ぐとともに入院中の竹中昇歯科医師(六九)の病状回復を待って業務上過失致死の疑いで本格捜査に乗り出すことになった。
同署のこれまでの調べによると、死んだ小池樹里ちゃん(三つ)は塗布直後、いすから転げ落ちて苦しみ出し、口から煙を吐きだして近くの病院にかつぎ込まれたとき、顔に血の気が全くなく、口と鼻からドロドロした茶褐色のおう吐を続け「腹が痛い」ともがき苦しんだ。
しかも、舌が青白くなっているに唇だけが反対に真っ赤にはれ上がっており、診察した内科医から「おう吐物は食べ物や胆汁とは明らかに違ったもので、医師生活三十年を通じ、これまで見たことがない」という所見を得た。
解剖所見でも「急性毒物中毒」とはっきり出ていることから、同署では塗布されたのはフッ化ナトリウムではなく、ほかの毒物と判断した。毒物の鑑定については、とりあえずおう吐物と胃の粘膜の分析結果が一両日中に判明する見通しだが、樹里ちゃんの口の中がひどくただれていた症状などから、今のところ虫歯の充てん剤として使われるメタルボンド洗浄用のフッ化水素が間違って使われた疑いが強いとみている。フッ化水素は「毒物及び劇物取締法」で指定された毒物で、ガラスを溶かすなど強力な刺激性を持っている。
同署は解剖鑑定書がまとまるのを待って事件処理に当たるが、二十一日、樹里ちゃんの通夜で軽い脳血栓の発作を起こした竹中歯科医が数日中に退院しだい、本格的な取り調べを行う方針。



2社の記事を見比べても、

河北の
>口から煙を
読売の
>血の混じった泡をふき始め

同じことを言っているような、そうでないような微妙な線です。


翌日の報道(B):
夕刊讀賣新聞 昭和57年(1982年)4月23日 15面


「酸性劇薬」が濃厚 
診療室内に数点
院長の聴取はできず
幼女の死
【八王子】東京都八王子市めじろ台の「竹中歯科めじろ台病院」=竹中昇院長(六九)=の治療を受けた同市散田町四の二九の四、会社社長小池美章さん(四九)の長女樹里ちゃん(三つ)が急死した事件を調べている八王子署は、二十三日までの調べで、竹中院長が劇薬をムシ歯予防薬と間違えて樹里ちゃんに塗布した可能性が大きい、との見方を強めている。これは竹中院長がフッ化ナトリウム液を塗布したと認識しているのに、樹里ちゃんの口の周囲がただれたようになっていたためで、塗布した薬品は酸性系の毒物の疑いが濃くなっている。
これまでの調べによると、事故が起きた二十日、同医院で治療を受けた患者は約十人。竹中院長はフッ化ナトリウム液を塗布したのは樹里ちゃんだけだったと話している。液を入れた金属皿は事故後洗浄されていたが、同署はゴミ捨て箱に入った治療用ゴミを押収、フッ化ナトリウム液がついているガーゼ、または綿球があるかどうかも調べている。
診療室内には毒物劇物取締法に例示されている劇薬が数点置いてあり、同署は竹中院長が使用したと話しているフッ化ナトリウム瓶の容器とともに押収している。
竹中院長が脳血栓の疑いで倒れ、事情聴取はできないため、同署は樹里ちゃんの治療の際、同席していた竹中院長の妻(五九)から、事情を聞くことにしている。
警視庁科学捜査研究所に依頼している鑑定は、早ければ明日中にも出る予定で、東京慈恵医大で行われている毒物鑑定も、通常は一か月かかるといわれているが、竹中院長が使ったというフッ化ナトリウムはアルカリ性であるのに対し樹里ちゃんの症状は明らかに強酸性劇毒物を与えた時の様相を示しており、同署はフッ化水素酸などの劇物を誤って塗布した、との見方を強めている。
フッ化水素酸は、歯科技工に使う劇物で、開業の歯科医では一般の治療薬とは別に置いているのが普通。



二日後の報道:
讀賣新聞 昭和57年(1982年)4月24日 23面


やはり毒物塗った
幼女の死
院長の刑事責任追及
東京都八王子市めじろ台の「竹中歯科めじろ台病院」=竹中昇院長(六九)=で、治療を受けた同市散田町四の二九の四、会社社長小池美章さん(四六)の長女、樹里ちゃん(三つ)が急死した事件で、警視庁科学捜査研究所は竹中院長がフッ化ナトリウム液を塗布するのに使ったとしているポリ容器や吐しゃ物をふき取ったタオルなどの鑑定を進めていたが、二十三日午後、ポリ容器に残っていた微量の液体から、毒物のフッ化水素酸の反応を検出した。このため、八王子署は、竹中院長が、フッ化ナトリウムとフッ化水素酸を間違えたと断定、脳血栓で入院中の同院長の回復を待って、業務上過失致死容疑で刑事責任を追及することになった。
同署では事件後、樹里ちゃんの遺体を東京慈恵医大で解剖するとともに、警視庁科学捜査研究所に治療用ポリ容器(三百cc入り)、タオル、吐しゃ物の受け皿などの鑑定を依頼していた。鑑定結果によると、ポリ容器に残っていた微量の液体から、まず強い酸性反応を検出、さらにエックス線解析をしたところ、強い毒性のあるフッ化水素酸の反応があった。
一方、竹中院長の妻A子さん(五九)も、八王子署の事情聴取に対し、、「樹里ちゃんに塗布下溶液を自分の歯に塗ったところ、刺激があった」と証言した。それによると、A子さんは、樹里ちゃんや院長が救急車で病院に向かったあと、「薬を間違ったのでは」と思い、ためしに塗布液を自分の歯に塗ってみた。ところが、強い刺激とともに歯ぐきが荒れたため、うがいをして吐き出したという。
こうしたことから、同署では、竹中院長がフッ化ナトリウムと勘違いしてフッ化水素酸を塗布したものと断定、間違えた理由などを追及する。
これまでの調べによると、同医院では、先月十九日、同市台町二の一七の一五、「梶谷歯科商会」(梶谷久幸社長)にA子さんが「『フッ素』を持ってきてほしい」と電話で依頼、溶液一瓶を取り寄せた。その際、A子さんは、フッ化ナトリウム液の場合には必要ないはずの「押印した受取証」を要求されており、同商会から届けられた溶液が、フッ化ナトリウムではなくフッ化水素酸だった疑いが強い。A子さんはこの溶液を入れた容器を薬棚に保管しておいたと話していたという。



歯科医の奥さんが事件直後にフッ化ナトリウム液(実はフッ化水素酸)を自分に試したこと、
業者にはフッ素といって注文したことがここで出てきます。

4月最後の報道:
讀賣新聞 昭和57年(1982年)4月27日 23面


私が劇薬と間違えた
虫歯治療幼女急死「償いたい」と院長供述
【八王子】東京都八王子市めじろ台の「竹中歯科めじろ台医院」=竹中昇院長(六九)=で治療を受けた同市散田町四の二九の四、会社社長小池美章さん(四六)の長女樹里ちゃん(三つ)が急死した事件について、警視庁捜査一課と八王子署h二十六日までの事情聴取で、竹中院長から「私が薬を間違えた。今後、出来る限りのことをしてつぐないたい」との供述を得た。このため、同署は竹中院長がフッ化ナトリウム液と劇薬のフッ化水素酸を取り違えたことによる事故と断定、裏付け捜査が終わり次第、竹中院長を業務上過失致死容疑で書類送検する。
調べによると、同医院では、虫歯予防のフッ化ナトリウムが底をついたため、先月十九日、竹中院長の妻悦子さん(五九)が八王子市内の薬品業者に「フッ素を一本持って来てほしい」と注文した。この注文のしかたがあいまいだったこともあって、業者はフッ化水素酸のことと思い、大瓶一本を届け、悦子さんが薬品棚にしまい込んだ。
このびんには「フッ化水素酸」というラベルがはってあった。竹中院長はこれをよく確認せずにフッ化ナトリウムの小瓶に移し、今月二十日に樹里ちゃんが母親に連れられ、虫歯予防のためのフッ素塗布に来院した際にそのまま塗布、樹里ちゃんがフッ化水素酸による中毒を起こし死亡した。
同署では、さらに悦子さん、薬品業者などから事情を聞いて裏付け捜査を進め、竹中院長を書類送検する。



院長がフッ化ナトリウム液を移し替えるときに、元のビンのラベルを見ていませんでした。
ここが失敗を未然に防げる最後のライン。



初歩的なミスから来た事故ですが、どこで気づけばよかったのか。
日常のチェックというものについて、考えさせられます。


2社比較でもここまで違いますので、
当時の朝日や毎日、週刊誌記事などをご覧になれるかたは、内容を確認されてはいかがでしょうか。

(追記)
フッ化水素と、フッ素を間違える?なんて恐ろしいことが、過去の歯科現場で | デンタルケアのQ&A【OKWave】
歯科での講義では、歯科材料店の変更がポイントとなっていたようです。歯科医院からの注文が多い業者=客が言うフッ素とは「リン酸酸性フッ化ナトリウム」、歯科技工所からの注文が多い業者=客が言うフッ素とは「フッ化水素酸」という推測。

(追記2)
この記事を読んで「歯医者が悪い」「レベルが低い」「強く処罰されるべきだ」という意見を持ったのなら、あなたも似たような善意あふれる行動で人を死に至らしめる可能性があります。

この事例から学ぶべきは、他人から引き継いだものは何であれエラーを含んでおり、特に何かを変更したときに発生する確率が高く、発見するための作業を毎日の仕事に組み込んでいなければ人が死ぬこともある、ということです。
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テーマ:歯科治療 - ジャンル:ヘルス・ダイエット



コメント

憤りを感じた。

  • 2013/01/31(木) 22:03:38 |
  • URL |
  • ちょもらん #-
  • [ 編集 ]

母親の気持ちを考えるといたたまれない。
この女の子もかわいそうでならない。

  • 2013/03/26(火) 23:25:16 |
  • URL |
  • 名乗らず立ち去るかっ #-
  • [ 編集 ]

フッ酸を塗られるとかこの世で最も苦しい死に方のひとつだろう
本当にかわいそう

  • 2013/06/01(土) 12:45:18 |
  • URL |
  • 名乗らず立ち去るかっ #-
  • [ 編集 ]

お母さんも相当苦しんだ事でしょうが、この女の子は更に可愛そうで言葉に成らない、虫歯にならない様に信頼しているお母さんの言う事を聞いて怖い歯医者さんで治療を受けたのに、まさか亡くなってしまうとは・・・・
お母さんは今でも後悔していると思う、非常に可愛そうです。
こんな、初歩的な医療ミスはあってはならない、報酬を得て医療に当たっている者が、こんな初歩的ミスを犯した場合は、同罪にするべきである。
ご冥福をお祈りします。

  • 2013/07/14(日) 04:00:48 |
  • URL |
  • 名乗らず立ち去るかっ #-
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Re: タイトルなし

ご感想ありがとうございます。

あなたも、日常生活していてこの歯科医の立場になりうること、そしてそれを防ぐにはどうすればよいのか、をお考えいただければと思います。

  • 2013/07/15(月) 16:16:21 |
  • URL |
  • Betelgeuse #-
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  • 2015/07/26(日) 01:11:04 |
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