一神教専用に作った首都は世界中の人々で大発展したものの、
ほかの地方は都会に食料をとられて大変。
政変後、隣国へ軍隊を遠征させて、首都住民は神官もセットで緩衝地帯に引越しさせた。
大都市ではいろんなことがあったな、という思い出話はさまざまなバリエーションで創世記にまとまった。
という本。
アラム語聖書、ファラオたちの行動、記録に残る当時の風習、を突き合わせていて、面白い読み物となっています。
それぞれのヘブライ文字にどのような意味のヒエログリフの特徴が残っているのか、図が多くて参考になります。
元の、LES SECRETS DE L'EXODE はモロッコ生まれのメソド・サバ(Messod SABBH)、ロジェ・サバ(Roger SABBAH)により2000年に出版されたフランス語の本。
英語版より先に日本語訳が出版されました。

英語訳版はハードカバーやペーパーバックで何種類かあるようです。



本の中で特に目を引いたのが、13歳で行っていた割礼を、出生8日目に行うようになった点についての仮説。p.417より
アケトアテンの出生率の再燃に直面したかれは、たぶん、新生児の割礼を口にしやすかったのだろう。王の意思にしたがった下層民も貴族も、男の赤ん坊に危険な割礼をほどこさなければならなかった(出血か重感染による死)。一神教に改宗した新しい住民たちは、十三歳でこの儀礼をおこなっていた神官ヤフウドたちと、おなじ動機づけをもたなかった。アラム語の聖書の文章が暗示するように、女性の中には反抗して、これにしたがわなかった人たちもいた。
この時代、出生後一か月間の幼児の死亡率は高かった。経験不足の手でおこなわれた新しい儀式のために、男児の死亡率は大きく増加したにちがいない。労働者の村から、死んだ新生児の遺跡が発見されている。この仮説どおりの大量虐殺が、長子の死というエジプト第二の災厄の伝説で表現されたのかもしれない。
この本では、ユダヤ人(アケトアテン住民)の指導者となった2名について、モーセをラムセスⅠ世、アロンをホルエムヘブと見ていますが、その点については反論しているブログがありました。
モーセとは誰だったのか?(その6) - 虚空漂浪日記
この二人は一貫して軍人であり、アテン教をトコトン憎んでいたはずです。
神とされる君主アイは、トゥトアンクアメンの墓を自分の墓にしてしまいますが、徹底的に破壊され、アイのカルトーシュは削られているそうです。
誰がやったのか。多分、ホルエムヘブかラムセスⅠ世でしょう。
モーセをメラリーⅡ世、アロンをパネヘシという2神官と仮定するとうまく説明できる、と主張されています。
また、この二人はアクエンアテンの死後、パタリと歴史から姿を消し、自らの墓にも遺体は残されていないのです。
まして、アテン教徒をかっての首都であるアケトアテンから導き出すには、<神=アイ>の命令であっても、それを人々に伝える=以前から伝えていた=神官でなければならないはずです。
軍人であるホルエムヘブやラメセスⅠ世ではできない仕事だと思うわけです。
いずれにしても、都市住民を移動しなければならない政変で、大きな役割を果たした人物のようです。
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