1977年に放送され、たびたび再放送されているあらいぐまラスカルというアニメをご存知でしょうか。
北アメリカで少年がアライグマを飼育するものの、アライグマは成長すると近所の畑を荒らしまわり、最後には森に捨てに行くことになる物語です。原作の「はるかなるわがラスカル」(Rascal)はほぼ実話ベースとのことです。
このアニメに影響されて、日本ではアライグマがペットとして輸入され、最終的には野生化し大被害をもたらすようになりました。
アライグマ被害1億6千万円 16都道府県で農作物荒らす (2/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/080218/sty0802180845003-n1.htm 魚拓
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/080218/sty0802180845003-n2.htm 魚拓
狂犬病予防の実態:アライグマの狂犬病①〜侵略的外来種アライグマの危険性〜: Barking Dog
http://barkingdog.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_ca10.html
ペット管理の問題として、「ラスカル」は1984年の映画「グレムリン」と同じ教訓を持った話です。「グレムリン」では、少年がペットとしていた奇妙な生物「モグワイ」が、飼育のルールを破ったことにより大増殖し、町を破壊しました。
本来ならば「ラスカル」も「グレムリン」も、やっかいな生物をペットにすることの危険性をおしえてくれる物語です。
しかし、「ラスカル」の場合、1週間単位で放送されるという様式に問題がありました。
幼く、かわいらしく、飼い主と交流している部分だけを消費できたために、「ラスカル」のアニメは事実上「アライグマをペットするとこんなにすばらしい」というプロモーションビデオとして機能してしまったのです。
メッセージを正しく伝えたいなら、どんなにくどかろうと分割して消費される各単位にもメッセージは盛り込め、ということなのでしょう。
その2。パプアキンイロクワガタは、いずれアライグマとなるのか
パプアキンイロクワガタ(パプワキンイロクワガタとも)は、ニューギニアで生きている中ぐらいの大きさの、緑や青など色が美しいクワガタムシです。
日本では、2000年に輸入できるようになりました。
学名を Lamprima adolphinae 、英語名を Papua Golden Stag Beetle といいます。
飼いやすく美しいクワガタとして、現在では安価で売られています。
このクワガタを輸入できるようになったいきさつに問題がありました。
どうやらこのクワガタは大害虫となるようなのです。
1983年に、小学生向けの図鑑「世界のカブトムシ」(小学館の学習百科図鑑40)で、生息地で何を食べているか、昆虫写真家の松香宏隆氏による写真が掲載されました。

大あごをじょうずに使って草の茎を切り落とす。
切り落とした茎の切り口から出るしるを吸う。
http://www35.tok2.com/home/mucklam/HP003/papuakiniro.htm 魚拓
オスの前足にある扇型の突起は草の茎を切断する為のナイフである。茎を登り、顎の付け根で茎の太さを測定し、頃合の場所を見つけると、顎で固定して前足の扇型のそれにより切断し、流れ出す汁を吸うらしい。変わったクワガタである。
実に興味深い生態です。
しかし普段からハキリバチにバラの葉を取られる園芸家、ヨトウムシ(ネキリムシ)に苗を倒される農家にとって、カナブン並みに飛び回り一回の食事のために葉や茎を切断していく虫、は悪夢に近い画像でもあります。
ブラックバスなどの外来種をどうするか、という法律(外来生物法)の議論でも、このクワガタは取り上げられました。
園芸植物や農作物にこのクワガタがどういう影響をおよぼすのか。
中央環境審議会野生生物部会第3回入種対策小委員会会議禄(平成15年4月15日)の、小島啓史氏の発言。太字は引用者。
http://gurapetokutei.gozaru.jp/hp/tokutei/008.htm 魚拓
それからもう一つの問題。原産地で害虫となっている種、はっきり現地で、例えばアボガドの大害虫、クビホソクワガタというものが輸入許可になっています。
このアボガドの大害虫が日本の果樹に害を与えないというのは一体だれが言い出したことなのか。
農林水産省が本当にチェックしたのかということを知りたいと思います。
それからパプアキンイロクワガタというクワガタは、1980年代ぐらいに子供用の本にベニバナボロギクというものの茎を切って汁を吸うという生態が発表されております。
これは残念ながら文献が出る前に普通の子供用の図鑑にそういうものが載ってしまったために、だれも文献に書いていない。
従って農水省の方は文献をチェックしたけれども、このパプアキンが生の植物を切るというのを誰も知らないというような話がありました。
私がパプアキンイロクワガタを使ってやった実験ですが、花屋さんでいろんな花を買ってきて無作為に花束をつくって、そこにパプアキンをとまらせました。
5分ごとに花を切ります。あらゆる花を切ります。ポピー、パンジー、デイジー、チューリップ、何でも切ります。
ともかく自分が気に入るような汁が出るまで切り続けて、このように花を全部切り落としてしまって、飛んでいってしまいました。
もちろんこのときは外に飛ばないように注意しました。
ということは、このパプアキンイロクワガタが害虫化する可能性は非常に高い。
この種が住めるような気候のところであれば、当然日本でも野生化して大害虫になる可能性がある。
こちらにいらっしゃる五箇先生に伺いましたら、モルジブではこれが侵入大害虫になって、どうやって駆除したらいいかということを聞かれたそうです。
現実に問題があるのは熱帯種なんですが、新成虫は非常に高い耐寒性を持っています。
私が実際に確認した例でも、日本の前の冬、そのまま新成虫で越冬してしまいまして、今活動を始めています。
これが温暖な花卉園芸地域、例えば奄美大島のようなお正月に花を供給するような地域に入って野生化したら一体どうなるのか。
だれが責任をとるのでしょうか。
上記の五箇公一氏の、第2回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合(昆虫類)(平成16年12月15日)での発言。太字は引用者。
http://www.env.go.jp/nature/intro/4document/sentei/insect02/indexb.html 魚拓
事務局の方のお話にも、あるいは後からお2人が話される部分でもかなりふれられると思いますが、まず植物への加害、これは別に農作物に限らず、植物へ加害するであろうというクワガタが意外に多うございます。
実際にはそこにも書いてございますが、ヒラタクワガタとかツヤクワガタ、あるいはホソアカクワガタ、そして今回、13番ということで実際に私が実験をしてみました。
パプアキンイロクワガタですね、このあたりのクワガタというのは実は野外でも木の枝先を削って樹液を出したり、あるいはパプアキンイロクワガタに至ってはキク科植物の茎をちょんちょんちょん切って、そこから出る汁をなめると、実験的にやりますと、もうイチゴからソラマメから日々草から、もうどんどんどんどんやってくれるのですね。
こういう事例がございますので、植物防疫法のもとで決して害虫にならないだろうと言われているクワガタの中にも、もしかしたらなり得る可能性があるというものが含まれているということをあえてご指摘させていただいております。
素質・実力・普及度ともに、アライグマと同じポジションになる可能性は高そうです。
このクワガタがどのようにして輸入可能になっていったのか、参考となるURLをまとめておきます。
まずは1999年に、輸入したいという申請をした人から。
外国産クワガタムシ輸入解禁申請記(前編)
http://kuwahouse.com/kaikin/shinsei01.html 魚拓
主として日本の農産物や植物に被害が発生するのを防止するためです。
従ってたとえば明らかに肉食であるサソリ、毒グモ等の輸入はOKですが、我が愛しのくわがた達は一部の種を除いて現在輸入不可となっています。
理由は「詳しい生態が未知」のためだそうです。逃げ出せば人命にかかわるようなサソリやワニやトラがペットとして輸入されているのに、「推定害虫」の濡れ衣?を着せられたくわがたが輸入禁止という現実に理不尽さを感じ、今回解禁のお願いに行ってきた次第です。
外国産くわがたむし輸入解禁申請記(後編・その2)
http://www.asahi-net.or.jp/~id8k-sgn/kuwabaka1999kaikin/shinsei04.htm 魚拓
前回は「日本産クワガタムシと同じなのだから無害」という前提に立ち、日本に産するクワガタムシと同種あるいは近縁種に関して申請をしましたが、今回は44種解禁をふまえ「クワガタムシそのものが無害」という前提に立ち、世界各地方の代表種に関して申請してきました。
以下は第二弾として農林水産省横浜植物防疫所に申請したリストです。
どのような書類となるのかは「メタリフェル輸入解禁申請準備」に書かれていました。
http://www.pteron-world.com/metalliferclub/freemeta2.html 魚拓
なるほど、「ニジイロクワガタの取扱について」なんてな感じで内部に通達が回っているようだ。見てみると、ニジイロクワガタの輸入解禁を申請している人は15もの文献を参考資料として提出している。小学館の世界のクワガタムシの図鑑(だったと思う)から、オーストラリアの文献まで色々とある。この通達に書いてある内容としては、ニジイロクワガタについて(何属に属するとか)と、その生態を簡単に纏めた物で、最後の締めくくりは有害動物より除外できると書いてある。以外と簡単そうだ(資料さえ揃えば・・・)。
また、この書類に手書きでノコギリクワガタ、アカアシクワガタ、ニジイロクワガタとカブトムシの学名が書いてあった。おそらく問い合わせに対して、この4種類しかだめですよ、というためのものであろう。
書類に目を通していると、平成11年3月31日付で「クワガタムシ科及びカブトムシ亜科昆虫の有害性判定の取扱について」なんていう通達が内部で回っているらしい。最近この手の問い合わせが多いのであろう。これに基づき、ニジイロクワガタも解禁されたとのことだ。是非見たい。
「これは、見せてはいただけないものでしょうか」と指を指す。
「いやぁ、これは内部関係の書類でお見せすることは・・・」
上記の通達「クワガタムシ科及びカブトムシ亜科昆虫の有害性判定の取扱について」は、画像が
http://www.zezera.com/200405.html 魚拓 に掲載されていました。画像へリンクします。
http://www.zezera.com/data/kuwagata/kuwa1.jpg 魚拓
http://www.zezera.com/data/kuwagata/kuwa2.jpg 魚拓
http://www.zezera.com/data/kuwagata/kuwa3.jpg 魚拓
2 有用な植物を枯死させる等有用な植物に大きな被害を生じさせる記録があるものは、有害性があるものとする。
3 次に掲げるものは有害性があるものとしないものとする。
若木の枝や芽に傷を付ける、花を摂食する、花を落とす、果実を摂食する、果実・子房に傷を付ける、幹又は枝に傷を付ける、根部を食害する等の記録がある場合であっても、有用な植物に大きな被害を生じさせる記録が無いもの
平成18年2月1日以降のクワガタ輸入については、外来生物法の以下のページをご覧ください。
コガネムシ上科に含まれる生きた昆虫を輸入される方へ[外来生物法]
http://www.env.go.jp/nature/intro/2procedure/kogane.html 魚拓
また、耐寒性については小島氏の発言以外に、2ちゃんねる上にも報告があります。
☆★パプアキンイロクワガタ★☆
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/insect/1119671304/844-848 魚拓
844 ::||‐ ~ さん:2008/06/24(火) 18:29:52 ID:wHW3W7/S
パプキンって冬越しするんですね。
去年10月羽化で12月から姿を見かけなくなったから死んでるもんだと思ってケースを掃除しようとしたら生きてました。
北東北の冬のマイナス温度を乗り切るとは予想外…
ちなみに2ペアのオス2匹が生存、メスは固まってた。
845 ::||‐ ~ さん:2008/06/25(水) 09:58:11 ID:BsIIwImN
>>844
ホント?
846 ::||‐ ~ さん:2008/06/25(水) 22:51:11 ID:m2nlLg4F
うちでは5度以下ひと月で全滅したが・・・
氷点下を超えられるとは思えん
原産地もそんな低温にならんし
847 ::||‐ ~ さん:2008/06/26(木) 06:30:26 ID:IAR4oacb
844だけど本当の話、マットはパインチップだから寒さをあまり防げないはずなんだけど生きてた。
一緒に入れてたゼリーは干からびてて半分くらいに。
ちなみに同じ時期に羽化した国産ミヤマは寒さに負けました…
このパプキンがいつまで生きるか楽しみです。
848 ::||‐ ~ さん:2008/06/26(木) 08:48:03 ID:TIAZ9wpk
うちでは室内飼いで冬季最低2度くらいの環境で
飼育した事あるけど、成虫も幼虫も落ちなかったよ。
氷点下はどうか知らんけど、かなり耐寒性はあるんだね。
花卉・園芸栽培をされているかたは、日中に植物の先端を切り落としている、ぴかぴか光るクワガタを見かけたら役所・大学・報道機関など複数箇所に連絡されることをお勧めします。
虫は捕まえてビニール袋などで保管し、できれば植物を食べているところの写真を撮れるとなお良いでしょう。
tb:
痛いテレビ避難所 : クローズアップ現代 「日本のクワガタが危ない」 - livedoor Blog(ブログ)
シクラメン生産直売 宮子花園:バラの花には、アブラムシがやって来る!
イチゴ栽培をめぐる戦い〈病気と鳥と害虫と〉:歩きながら道ばたに種を蒔いてみたりする、日々。:So-net blog
地産地消と特産品を訪ねて: 高原の太陽と実りの豆…「ソラマメ」
link:
輸入クワガタ
http://wwwc.pikara.ne.jp/boris/Hitorigoto/Hitorigoto358.htm
バイオカフェレポート「日本人とクワガタムシ」
http://www.life-bio.or.jp/topics/topics263.html
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