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Betelgeuse's Diary

「その作業」の意味を考えているか?ジャーサラダ記事に見る十二国記『図南の翼』

ジャーサラダは、作ってすぐ食べるべき生野菜サラダを長時間保管するということで、食中毒の危険性が高い食べ物です。

それの作り方についての記事を読んでいて、十二国記シリーズの『図南の翼』(となんのつばさ)の一節を連想しました。

十二国記シリーズと呼ばれる小野不由美の異世界ファンタジー小説群。
シリーズ未読でも一冊だけで楽しめる作品として、番外編の『図南の翼』(となんのつばさ)があります。

国王を霊獣・麒麟(きりん)が選ぶ異世界では、王がいないと人を食う獣や自然災害が多発する。
自分に王の資格があるかもと思う人は、危険な道のりを経て世界の中心へ麒麟に会いにいく。
災害だらけの王が不在の国で、充分に警備されたお屋敷で暮らしていた豪商の娘は麒麟へ会おうと家出し旅を始める……。

とても空想的な設定ですが、内容はハードな登山です。

主人公はガイドを雇い、麒麟に会いに行く集団と行動を共にすることになります。
一行のなかで、ある商人は人手が足りているとしてガイドを雇いませんでした。
ガイドと喧嘩別れした主人公はその商人たちへ合流しますが、そこへも獣は襲い掛かります。

そして、ガイドの行動を見て対策の意味を学習していた主人公と、ガイドの形を真似た『対策』をする商人の違いが表れるシーン。

「室(しつ)さん、焚火の周りの枝は……」
季和は先を遮った。
「ああ、あれか。珠晶(しゅしょう)は見ていなかったかい? 珠晶のところの猟尸師(りょうしし)もああしていただろう。風よけだろうか、それとも何かの呪いだろうかね。猟尸師は妙なことをする。ああする以上は、何か意味があるんだろうね」
この男は、と珠晶は愕然とした。剛氏(ごうし)の後をついて歩いて、いろんなことを真似しながら、どうして剛氏がそんなことをしているのか、理由や目的を何一つ考えていないのだ。ただ、やみくもに真似さえすれば安全なのだと思っている。



図南の翼 十二国記 (講談社X文庫ホワイトハート)、p.235-236
火の使い方を警告したところ騒ぎまわる商人に主人公は呆れ、一行へにわかガイドとして獣対策の指導をすることになった主人公は、経験を積んだ専門家の力が必要なのだと痛感することになります。

ただの小賢い主人公が王となる資質を得るメインテーマであり、とても印象深い小説でした。



この小説の商人が行った「焚火の周りの枝」と似た例を、ジャーサラダの記事の「煮沸消毒」に見ました。

logq_fa氏による記事。
ガラスビンに入れるだけで想像以上のごちそうができる「ジャーサラダ」レシピ本でいろいろ作ってみました - GIGAZINE[archive]
元となっているのは若山曜子氏のレシピ本。
ジャーサラダ

毎回行う必要はないのですが、ジャーは初回使用前に煮沸消毒する必要があります。お鍋の底に布巾を敷いたら瓶を投入し、そこになみなみ水を注ぎ……
お湯を沸騰させ、10分間煮沸。この時、沸騰したお湯の中に瓶を入れると温度差で割れてしまう恐れがあるので、水の状態から瓶を入れておくのがポイントです。


ニース風サラダは冷蔵庫に入れて3~4日持つとのこと。



ジャーサラダのレシピ内容は、煮沸消毒したガラス瓶に、ドレッシング、アンチョビ、まな板で切った茹で卵やキュウリやトマトや葉物野菜を素手で詰めていき、数日間は保管できると主張したもの。

……この時点で、激しくツッコミを入れたい気分に駆られます。

記事中で作られているものはサラダと銘打たれていますが、食べる直前に瓶底のドレッシングを混ぜる行為があるだけで、実質は浅漬けです。
しかもそこに、素手やまな板や包丁に接触した野菜、茹で卵、ツナなど、腐敗しやすいものが入っています。

浅漬けでは深刻な食中毒が頻発しています。
浅漬けは衛生管理を確実に(厚生労働省、PDF)[archive]
「生もの」と考え管理しっかりと 浅漬けO157食中毒再発防止+(1/2ページ) - MSN産経ニュース[archive 1 2]

伝統的な漬物は、塩分や発酵によって雑菌や大腸菌などの増殖が抑えられることもあり、保存性が高い。一方、今回の食中毒の原因となった浅漬けは野菜を調味液に漬けただけで、塩分濃度が低く、発酵もしていない。

 食品衛生コンサルタントの西村雅宏さんは「昔は、浅漬けといえど塩分濃度が高く、細菌の影響を受けにくかった。今は消費者の減塩志向もあり、塩分濃度が低い。そのため細菌が増殖しやすい。このことを理解していない事業者は少なくない」と指摘する。


(太字引用者)

記事を読んだ感想


ガラスビンに入れるだけで想像以上のごちそうができる「ジャーサラダ」レシピ本でいろいろ作ってみました - GIGAZINE

瓶を念入りに茹で上げて殺菌し、ナマ野菜(細菌たくさん)をまな板(細菌たくさん)で切って素手(細菌たくさん)で入れていくところ、本の著者へツッコミいれるべきか記事の著者にツッコミいれるべきか。

2015/01/31 10:33





危ないのは夏より冬だ!いとも簡単に発生する食中毒|フーズチャネル[archive 1 2]

さて、先ほどの「腐敗の3つの条件」を振り返ってみましょう。「栄養・水・温度」が揃えば、腐敗は進行すると書きました。ジャーサラダの場合、密閉される容器を用います。その中に入れるのが生野菜。これが栄養になり、水気を含んだ生野菜は絶好の水分発生源となります。さらに、冷蔵庫内であっても氷点下にするわけではないので、腐敗し、細菌の繁殖は緩やかながら進みます。
「瓶の煮沸消毒が不十分であったら」「作る人の手洗いが不十分であれば」「サラダにエビなど加熱不十分のものが入ったら」と、恐ろしい結果を想像せざるを得ません。




このジャーサラダというブームで、弁当など低温に保てない環境だったり、作ってから時間の経過したものによる深刻な食中毒が発生しないよう願っています。



ジャーサラダを「サラダのまま」安全に保存する方法はある? ~「水」の役割~ - Togetterまとめ




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