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Betelgeuse's Diary

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童謡「雪」。歌詞の鹿児島からの影響と、曲のチェコからの影響について

冬になると、クリスマスソングや正月ソングに混じって再生されることが多いおなじみの童謡「雪」。
この曲の中で、こたつと猫について現代で誤解されていることを、
ほとんどの人が勘違いしている「猫はコタツで丸くなる」本当の姿
の記事で書きました。

ここでは、「こんこ」と「こんこん」はどう並列で使われてきたか、と、明治時代の童謡が讃美歌からどう影響されたか、をメモします。

歌詞

1901年
1901年に『幼稚園唱歌』で「雪やこんこん」という東クメ 作詞 滝廉太郎 作曲の歌がありますが、まったく別の曲です。
幼稚園唱歌[archive] リンク先楽譜あり


  雪やこんこん、   あられやこんこん。
  もっとふれふれ、  とけずにつもれ。
  つもった雪で、   だるまや燈籠。
  こしらへましょー、 お姉様。




1907年
雪のふりかたを示す「こんこん」は、1907年(明治40年)、私立鹿児島学校講師の黒江隆三と堅山歓一による「文例 第二集」で以下のように書かれています。

雪がコンコン

降るわ降るわ 大分降るわ。

宛然(さながら)嵐に散る桜のよう。

古人(いにしえびと)が[六花翩々絮の如く](りっかへんべんじょのごとく)、[鵞毛の如し](がもうのごとし)と言うているが、本当にそうだ。

人目も草も枯れ果てた寂しい景色が、見る見る変わって、立枯(たちがれ)のような木も、常盤(ときわ)の松も、たちまちに白い花が咲き、賤が屋(しづがや)が、玉の臺(うてな)となるとは、何とありがたい仕合(しあわせ)ではないか。

弟が「雪がコンコン!」と叫ぶと、

犬のポチがわが名を呼ぶかと、尾を振って来るのも、ひとつの愛嬌(あいきょう)で、

子猫が目をギロギロして逃げ尻を構えているのは、この秋生まれて、始めて雪が降るのを見るからであろう。

あれあの藪陰(やぶかげ)に、南天の実が、ひとりまっ赤にしている。兎(うさぎ)を作った時は、あれを目の玉にしょう。

達磨(だるま)を作ったらどうしょう。よしよし大丈夫だ。あそこにソテツの実がある。だるまの眼の玉には丁度(ちょうど)だ。

愉快愉快。

降れ降れ。
積(つも)れ積(つも)れ。

それ、竹山に積(つも)ったのはしづれ出した。
瀑(たき)が落つるが様(よう)にして。

膨らみ居た雀は、驚いたであろう、乱(みだ)るる雪の中を突貫(とっかん)して、(まっしぐら)に駈けて、石灯籠(いしどうろう)の中に、籠城の姿とはおもしろい。

門外には、弟が頻(しき)りに歌う聲(こえ)がする。
「雪がコンコン、霰がコンコン、お寺の山椒の木に引っ掛かって、コンコン」

○初雪

※読みやすくかな使いなどをアレンジし改行などを加えていますので、正しく原文で読みたい人は注意してください。

後に童謡「雪」に出てくる、枯れた木に花が咲くという形容や、犬や猫の様子などはここで現れています。
この文には「※鹿児島県民の感想です(土地により異なる場合があります)」とつけておきたい。

1911年
2014年現在もっとも知られるこの童謡「雪」は、1911年(明治44年)の『尋常小学唱歌(二)』が初出となります。
「雪」 作詞者、作曲者ともに不詳[wikipedia]

雪やこんこ 霰(あられ)やこんこ。
降つては降つては ずんずん積(つも)る。
山も野原も 綿帽子(わたぼうし)かぶり、
枯木(かれき)残らず 花が咲く。
雪やこんこ 霰やこんこ。
降つても降つても まだ降りやまぬ。
犬は喜び 庭駈(か)けまはり、
猫は火燵(こたつ)で丸くなる。



この歌詞の内容を、ここまでの流れから想像して書いてみると、こうなります。

鹿児島に、初雪が降り出した。
雪よふれ、どんどんふれ、アラレもふれ、どんどんふれ。と小さな子供が歌っている。
雪は降り続け、どんどん積もっていく。
近くの山も、野原も、みなタンポポの毛のように白く帽子をかぶっているようだ。
冬で葉を落として寂しそうだった木々も、雪が積もってまるで花が咲いたように鮮やかだ。

雪よふれ、どんどんふれ、アラレもふれ、どんどんふれ。と、ガキはまだ外ではしゃいでる。
雪は止まない。
庭で、犬は興奮して雪ダイブしている。どう見てもテンションがやばい。
家の中で、猫は火鉢の上に布団がかけられたコタツの上に陣取り、丸まっている。



1925年
北原白秋は1925年(大正14年)に、「お話・日本の童謡」の210ページから220ページの「雪こんこん」で、北国と南国の違いを説明しています。
この説明から見ても、童謡「雪」は南国由来のもののようです。

雪こんこんのお話。

雪こんこんは、何処の国でもうたいます。
ほんとに、あの紫がかった薄墨いろの空から、こんこんと雪が湧いて降って来るのはうれしいものです。
それも降り出したなと、お窓からでも眺めている時分がなんとも云えません。
お窓の格子につかまって、

ふれふれ、小雪。
たまれ、小雪。
垣や木のまたに。

これはずっと昔、鳥羽天皇のお小さい時にお歌いになったものだそうです。
雪のうたでは一番古いもののようです。
それが後に、「ふれふれ小雪、丹波のこ雪…」と、なまって歌うようになったといいます。

雪ばな。ちる花。
空に虫が湧くわな。
扇腰にさいて、
きりりと舞いましょ。

京都ではこう歌います。あのちらちら粉雪を、白い虫が湧くと見たのは、かわいいではありませんか。雪の一つ一つが生きているようではありませんか。

爺さいの。
婆さいの。
綿帽子雪がふるわいの。
雨戸も小窓も閉てさつし。(加賀)

これは寒い北国の事ですから、もう雪が降るとなると、降りづめになるので、なんだか寒いさびしい気持ちがします。

ぼたぼた。降るなや。
浜のかかが泣くとや。(越後)

北国のは、みんなこうしたしんみりしたものです。空が暗いのに、ぼたん雪が吹雪にも風にもなるのでしょう。

それが南のほうのお国になると、明るいうれしいものになります。

雪は殿さん。
雨は草履持ち。(安芸)

雪は殿さま。
霰(あられ)は小姓。
雨は草履持ち。
風は盗人。(周防)

雪は殿さん。
霧は小姓衆。
雨は草履持ち。
お厩の前で、
ころげ団子だんごよ。(備後)


雪は降るものの中で、いちばんお品のよい、殿さまのようだと言うのです。
そうですね。あの白くてすっきりして、しんみりしている雪は。
その雪が、こんこんと降り出して来るのです。
子供たちは大喜びです。

雪こんこんよ。
雨こんこんよ。(東京)

雪やこんこん。
霰やこんこん。
お寺の柿の木に、いっぱいつもってこォんこん。(京都)


この「お寺の柿の木」はところによって、梨の木になったり、松の木になったりします。

雪やこんこん。
霰やこんこん。
お寺の梨の木に、
すっころころんと、
とまれ。とまれ。(越後)

雪こんこんや。
霰こんこんや。
寺の前の山椒の木の下に。
一升五合たまった。たまった。(越後)

雪こんこん。
霰こんこん。
お寺の山椒の木、
ひっかかって、
こんこん。(薩摩)


みんな雪こんこんと云うので、雪が生きているようでしょう。まるで白い蝶蝶かなんぞのようにとまれとまれいうのが、かわいいではありませんか。「すっころころんと。」も面白いでしょう。備中では「雪やこんころこ。霰やこんころこ。」とうたいます。これも目に見えるようですね。とりわけ、「霰やこんころ。」は、ほんとに白い玉のような霰がころころころげているようですね。それから、「霰こんごろごろ。雪ぼたぼたや。」(丹後)とも申します。それからまた、

雪は一升。
霰は五合。(大阪)

とか、先の「一升たまった。」とか、桝(ます)の勘定ではかるような歌い方も、童謡にはよくあります。たんととかちょっぽりとかいうよりも、この方がまたかわゆくきこえますね。この雪こんこんはいろいろおもしろいのが他にもあります。ついでに書いて見ましょう。

雪やこんこん。
霰やこんこん。
丹後但馬の犬ころや。(丹後)

雪やこんこん。
霰やこんこん。
深山の奥のたびこんこん。(因幡)

雪やこいこい。
霰やこいこい。
大山(だいせん)やまから雪ころころや。(鳥取)

雪もこんこ。
霰もこんこ。
こんこのお寺さ、
小豆(あずき)ばった留まった。
小豆しみしみ、
豆はころころころんだ。(陸中)


「しみしみ」とは凍ることです。こんこのお寺とはおもしろいではありませんか。ほんとに白い白い雪の中に埋もった、小さな、そうして清浄なお寺のような気がしますね。
あ、灯(あかり)がちらちら点(とも)ったようです。








童謡「雪」の出だしは、チェコの作曲家であるアントニン・ドヴォルザークの、聖書の歌 (Biblické písně) 作品99、B.185の10曲目「主に向かいて新しき歌を歌え Zpívejte Hospodinu píseň novou」前奏や間奏にとても似ています。
「雪」の作曲者は不明ですが、明治時代に唱歌を作曲した人たちは、讃美歌からさまざまな影響を受けていたようです。
Anotnín Dvořák: Biblické písně č. 5 - 10, Magdalena Kožená

「雪やこんこ」はドボルザーク作曲だったんだ… | .Nat Zone - Identity, Privacy and Music

彼の作品に、聖書の歌 (Biblické písně) Op. 99 B. 185 というものがあります。16世紀のクリチカのチェコ・プロテスタント聖書に基づいて作られた、1894年3月の作品です。



アントニン・ドヴォルザーク 主に向かいて新しき歌を歌え

唱歌「雪やこんこん」のメロディを連想させるすがすがしい伴奏のメロディは日本人にはとりわけなじみやすいものです。安田寛氏の研究などで、明治期の文部省唱歌にはキリスト教の賛美歌の強い影響があることが解き明かされておりますので、この曲とも巡り巡って何らかの繋がりはあるのかも知れません。

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